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コベナンツ(Covenants)は、シンジケートローンの契約書に盛り込まれた借入人の確約等の条項で、借入人が貸付人に対して約束する事項です。
コベナンツを設置することによって、融資先の事業活動、財務活動を一定程度制限でき、貸付人が過大なリスクを負担することを抑制できます。また、コベナンツ抵触の有無を確認するために融資先に対して定期的・継続的に情報開示を要請できますので、融資先の信用状態の把握もできます。
コベナンツは借入人と貸付人の合意によって自由決定できますが、一例としてJSLA制定のリボルディング・クレジット・ファシリティ契約書21条借入人の確約を要約すると、次のような内容になります。
(1)貸付人が借入人の財産、経営または業況に関する情報を請求した場合、直ちに報告する。また、財産、経営もしくは業況について重大な変化が発生、またはその恐れがある場合、格付け機関の短期または長期債務格付けが変化した場合は、直ちに報告する。
(2)本契約が終了し、債務履行が完了するまで、他の債務のために担保提供を行わない。また、一部の貸付人に本債務のために担保提供を行わない。ただし、全貸付人とエージェントが事前に了承した場合は、この限りではない。(ネガティブ・プレッジ条項)
(3)事業を営むのに必要な許可などを維持し、すべての法令等を順守して営業を継続する。主たる事業内容を変更しない。
(4)本契約に基づく一切の債務者支払について、他の無担保債務者の支払いに劣後させることなく、少なくとも同順位に扱う。(パリパス条項または同順位条項)
(5)決算時の貸借対照表における純資産の金額を~円以上に維持する。
(6)格付け機関の長期債務格付けを~以上に維持する。
(7)貸出債権について、仮差押え、保全差押え、または差押えの命令の送達を受けた場合は、直ちに通知する。
(5)(6)は財務計数・財務指標を一定水準以上に保つコベナンツですが、この他にもキャッシュフロー確保のためにEBITDA絶対額、当座比率、棚卸資産回転期間、自己資本比率、負債比率などの指標を基準とする場合もあります。このようにコベナンツは与信管理において、たいへん有効に活用できるものですが、実務上の運営においては財務制限条項について留意する必要があります。
シンジケートローンでは多くの場合、債権保全の観点から上記(5)のような財務制限条項が設けられていますが、融資先の財務実態に比較して、コベナンツ設定が厳格すぎると、コベナンツに抵触する事態の頻度が高まり、コベナンツ管理負担が、リスク抑制効果を上回る結果となり、非効率な結果になりかねません。
またコベナンツは、あくまで借入人と貸付人の合意事項にすぎませんので、その扱いを担保や保証と同等にするには限度があります。ですから案件検討段階で、コベナンツの位置づけを安易に担保保証条件の代替とすることについては慎重さが求められます。