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分割貸付の法的性格と融資義務について

分割貸付とは、たとえば設備資金の融資において、工事の進捗状況に応じて貸付金を数回に分割して交付するような場合に、交付のつど借用証書を作成することなく、初回の貸付金交付の時に貸付金全額を確定し、その後の貸付金の交付の時期や返済方法等を定める融資の方法です。通常は、証書貸付で行われます。

分割契約の法的性格については、これを諾成的消費貸借と考える説と、消費貸借の予約と考える説がありますが、定説はありません。

諾成消費貸借について

消費貸借は要物契約ですが、学説は当事者の合意のみで成立する消費貸借を認めており(一種の無名契約)、これを諾成的消費貸借とよんでいます。この考え方によると、金銭の授受に先立って契約証書が作成される場合には、一般に諾成的消費貸借が成立することになります。これは、取引の実際からして、消費貸借を要物契約とする合理的な根拠が乏しく、また、契約自由の原則からして民法の消費貸借と異なる契約をすることを否定すべき根拠がないことを根拠としています。これまでは、判例で真正面から諾成的消費貸借を認めたものはありませんが、間接的に認めているとされたところ、平成5720日、最高裁判決は明確に諾成的消費貸借という表現を用いて判示しています。これをもって判例上も認知された用語と考えてよいと思われます。したがって、金銭の授受に先立って消費貸借を成立させる合意があれば、この合意があった時に諾成的消費貸借契約が成立することになります。

このように諾成的消費貸借の考え方が認められた結果、取引先から借入の申し込みを受け、これに基づき稟議承認をもらい、取引先に対して貸出合意のような返事をした場合、あるいは、稟議承認を受けて銀行取引約定書及び金銭消費貸借契約書等の貸出書類を徴求したような場合においては、その時点で諾成契約が成立したものとなりえます。その後に銀行など金融機関の都合で貸し出しを拒否しても、金融機関の融資義務が問われるケースもありますので、融資が完全に決まるまでは、金融機関は慎重な態度をとります。ただし、実務的には、契約締結時に、契約が成立したと考えるのが一般的ですが、上述のようにこれ以前に契約が成立したとするケースが起こり得ますので、金融機関の対応は慎重なものになります。

諾成的金銭消費貸借の効果として、貸主は金銭を交付すべき義務(融資義務)を負い、借主は交付を受けた後に同額の金銭を返還する義務を負担します。また、金銭の授受前にこの契約につき有効な公正証書を作成できるし、また、借主の返還義務について抵当権を設定することもできます。したがって、貸出実行前に、たとえば抵当権設定兼金銭消費貸借契約書を締結して、それによって設定登記完了した抵当権の有効性は、前述の抵当権の付従性緩和によっても説明できますし、またこの諾成的消費貸借の考え方によっても説明できます。

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東原 正宗

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